損害

積極損害

 積極損害とは,交通事故により,実際に出費することになったものをいいます。
 被害者の方としては,実際に支出した費用を認めて欲しいという感情が強い部分だと思います。ただ,争いが生じたとしても,慰謝料等と比べて少額であることが多く,他で争った方が合理的である場合も多いように思われます。

 費目 内容 問題点  原則的な金額
 治療費 治療に費やした費用
  • 濃厚治療の問題
  • 症状固定後の治療費の問題
  • 柔道整復師の治療の問題
  • →要するに,交通事故と因果関係があるか否か。
実費
 付添看護費 介護・介助が必要な場合の費用
  • 付添の必要性
  • 将来の付添費
  • 完全看護の病院の場合の問題
職業付添人の場合は実費
近親者付添人は1日あたり6,000円程度
 入院雑費 入院時に必要となる物品の費用
  • 将来の雑費
  • 通常の生活雑費との共通性 
一日あたり1,500円程度
 交通費 通院等に必要となる費用
  • 家族の費用
  • 将来の交通費 
実費
 葬祭費 葬儀に必要となる費用 実際に使途した費用を損害とできないか  150万円程度 
 改造費 後遺障害による日常生活の不便の改善のために家屋・自動車を改造する費用
  • 新築・新車の問題
  • 通常の生活の利便性向上にすぎないのではないか 
実費
弁護士費用 弁護士に依頼するに必要となる費用 認容額の1割程度(実際に支出する弁護士費用とは異なる。)
その他 装具等 因果関係が認められる範囲で実費

消極損害

 消極損害とは,交通事故により,得られるはずであった金銭を失ってしまう部分相当の損害です。
 休業損害,逸失利益等大きな金額であり,大きな争点となる重要なものです。
 休業損害については多様な問題点・解釈がありますし,逸失利益についても同様です。

 費目 内容 問題点  原則的な金額
休業損害 受傷や治療のために休業したことにより失った収入分相当の損害
  • 基礎収入額の算定
  • 賞与減少の問題
  • 役員(取締役)の場合
  • アルバイトの場合
  • 収入が明らかでない場合
  • 家事従事者(無職)である場合
  • 休業期間の算定
  • 有給休暇の問題
  • 休業中も給料が支給されている場合
基礎収入額×休業期間
 後遺障害による逸失利益 後遺障害により将来にわたり減少することとなった収入分相当の損害
  • 基礎収入額の算定
  • 賞与減少の問題
  • 役員(取締役)の場合
  • アルバイトの場合
  • 収入が明らかでない場合
  • 家事従事者(無職)である場合
  • 完全看護の病院の場合の問題
  • 昇給による増収の考慮
  • 労働能力喪失率
  • 原則として自賠責保険後遺障害等級によるが,例外も少なくない
  • 労働能力喪失期間
  • 高齢者の場合
  • むち打ち症の場合
定年の問題
基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(中間利息を控除する考え方に基づきライプニッツ係数を用います。)
死亡による逸失利益 被害者が生存していれば得られた収入分相当の損害
  • 基礎収入額の算定
  • 賞与減少の問題
  • 役員(取締役)の場合
  • アルバイトの場合
  • 収入が明らかでない場合
  • 家事従事者(無職)である場合
  • 完全看護の病院の場合の問題
  • 昇給による増収の考慮
  • 生活控除率
  • 就労可能期間
  • 高齢者の場合
基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能期間(上記同様ライプニッツ係数)
その他 年金の逸失利益性等

慰謝料

 慰謝料とは,交通事故によって被った精神的苦痛についての損害です。
 慰謝料については,いわゆる裁判所基準と保険会社基準との隔たりが大きく,弁護士が関与して適正な処理をする意味が大きい部分です。

 費目 内容 問題点  原則的な金額
入通院慰謝料
(傷害慰謝料)
交通事故に基づく受傷により,入院・通院を余儀なくされたことで受けた精神的苦痛についての損害
  • 通院期間の問題
  • 濃厚治療でないか
  • 通院頻度が低くないか→修正通院期間
入院・通院期間に応じて
(例:通院6月 105万円程度)
 後遺障害慰謝料 後遺障害が残ってしまったことで受けた精神的苦痛についての損害
  • 職業等に与える特別な影響がある場合
  • 後遺障害認定非該当の場合
  • 近親者(家族)の慰謝料
後遺障害等級に応じて
(例 1級 2400万円程度)
(例 14級 105万円程度)
死亡慰謝料 被害者が死亡したことで受けた精神的苦痛についての慰謝料
  • 近親者(家族)の慰謝料
一家の支柱の場合 2900万円程度
その他の場合 2200万円程度
その他 事故態様,財産的損害が認定できない場合の補完的慰謝料,精神的疾患に罹患した場合,胎児への影響等柔軟に判断

減額事由

 被害者側にも過失(注意義務違反)がある場合,過失相殺といって被害者側の過失に応じて減額されます。
 また,交通事故により給付を受けた場合,その部分について減額(損益相殺)される場合があります。
 過失相殺については,一定の事故の類型ごとに基準がありますが,具体的な割合については,訴訟で裁判所の判断を仰ぐことも多いです。
 損益相殺については,難しい問題であり,解釈が分かれている部分もあります。一度ご相談下さい。

内容 問題点  原則的な処理
(広義の)過失相殺 被害者側にも過失(注意義務違反)がある場合
  • 過失割合の決定
  • 好意同条
  • 素因減額
被害者側に帰すべき割合に応じて減額される
損益相殺 労働災害補償保険法(労災保険法)による保険給付
  • 未払部分について
控除されるが,特別支給金は控除しない
健康保険法,国民健康保険法,国民年金法,厚生年金保険法,自働損害賠償保障法による公的給付
  • 控除される範囲は,対応関係がある範囲に限られる
対応関係がある範囲で控除される
失業保険 控除されない
搭乗者傷害保険
  • 慰謝料の算定において考慮すべきか
控除される
人身傷害補償保険(人身傷害保険) どのような場合にどの程度控除されるか(解釈が分かれている) 控除される場合がある
生命保険 控除されない

物損

 物の滅失,毀損(要するに壊れたこと)についても損害が発生します。
 人身傷害がある場合,物損と人身傷害との保険会社の担当者が違う等により,別個に取り扱われることが多いですが,一つの事故から発生した損害であるため,一括して解決するのがベターであると考えます。

内容 問題点  原則的な処理
車両 全損(修理金額が事故直前の交換価値を上回る)
  • 時価の評価方法(経済的全損)
  • レッドブックにない古い車
  • 特殊な車両(清掃車等)
  • 改造施工車
  • 買い換え費用
事故直前の交換価値が損害
全損未満
  • 塗装の問題(全塗装の是非)
  • 実際の修理の有無
事故直前の交換価値が損害
格落ち損害
  • 外国産車と国産車
  • 車両登録からの期間
一定の場合に限り認められる
代車料
  • 代車使用の必要性
  • 代車使用の相当性
代車使用が必要かつ相当である場合に認められる
その他 積荷,車内携行品等の損傷,休車損害等

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